prayer for Therese Rochette

この朝、ジョアニーのお母様の訃報に触れ、感じるより先に涙が出ました。
そして瞬間的に思い出したのは、あのトリノ五輪の時、彼女が滑った「枯葉/愛の讃歌」のフリープログラムです。

そのプログラムについて、彼女自身が以前、オフィシャルサイトで書いていたジャーナルを読んでいたからです。
古いウェブサイトの中にあるジャーナル、2006.1.6のものです→

初めて読んだとき、そのジャーナルを読みながら涙が浮かんだのをまだ覚えています。
プログラムについて彼女が語っている部分を訳してみましたが、勉強不足で正確でないところがあるかと思います。お気づきになったところがありましたら、ご指摘いただけるとありがたいです。

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(前略)

私のロングプログラムは"L'Hymne a l'amour"
つまり"愛の讃歌"のクラシカルバージョンで、
伝説のフランス人歌手 エディット・ピアフが作詞をしたものです。
この音楽は私の2つことにまつわるの深い意味があるのです。
それは私に自分自身の存在についてのことで、
そしてイタリア文化にとてもフィットすると感じたのです。

皆さんが理解しやすいように、
私はここでとても個人的な話をしようと思います。
これまではしてこなかったようなことなのですけど。

私の母には20代初めのころ、何年もの間愛し合ってきた人がいました。
二人は婚約をして、そして結婚式をあと2週間後に控えたときに、
母の婚約者は事故で亡くなってしまったのです。

そんな本当に悲しい時を経て、
母は私の父となる人ともう一度愛を育むようになりました。

二人は愛しあうがゆえに子供を欲しいと願うようになりました。
そして母は初めての妊娠をしたのですが、
出産直後に赤ちゃんは亡くなってしまったのです。
このことは更なるつらい経験でありましたが、
両親は共に乗り越えました。
私は二人が真に愛し合っていたからだと思うのです。

本当に子供が欲しかった二人は耐え抜き
もう一度子供を持とうとしました。
その結果が私!
私は二人のたった一人の子供なのです。

私の人生を通して、両親は私がもっともっと先へと進めるよう、
沢山支援してきてくれました。
二人は私にある限りの愛を与えてくれて、
そして今19歳となって、二人のくれた愛を、
私がすばらしい人生を送るために彼らのしてくれたこと
すべてに心から感謝をしています。

ディヴィッド(・ウィルソン)が私にこの曲のCDを渡してくれたとき、
前にも言ったけれど、実はこれが良い案かどうかピンとこなかったのです。
この歌についてあまり知らなかったですしね。

母と車に乗っているとき、
車のCDプレーヤーに入れていたから
彼女に聞いてもらって考えを聞こうと思ったのです。

でもショックを受けました。何が起こったのかわからなくて。
彼女は最初のノートを聞くや否や泣き始めてしまったのです。

母は私に、フィアンセが亡くなった後に
何度も何度も繰り返し聞いたのだと話してくれました。
それはまさに彼女の歌だったのです。

私は何も知らなかった。
彼女は私に歌詞を教えてくれました(もちろんフランス語でね)。

もしかしたらちょっと安っぽく思われちゃうかもしれないけれど、
彼女が私に教えたことを精一杯頑張って訳してみますね。


The blue sky could fall on us
たとえ青空が私たちに落ちてきて 

And the ground can collapse
地が崩れ落ちたとしても

No matter, as long as you love me
あなたが私を愛する限り どうってことないわ

I don't care for the whole World
世界中気にしたりしない

As long as love will fill my mornings
朝が来るたびあなたの愛が私を満たしてくれる限り

As long as my body will shiver under your hands
あなたの腕の中で身を震わせている限り

No matter, all the problems
どうでもいいの 問題じゃないわ

My love, because you love me
私の愛する人 あなたが私を愛してくれるから


(...)



If one day the life takes you away from me
もしもいつか人生があなたを私から離して 

If you die and you are far from me
死が私からあなたを遠ざけようとも

No matter, as long as you love me
どうでもいいのよ あなたが私を愛してくれる限り

Because I would also die
だっていつかは私も逝くのだもの

We will then have for us the Eternity
そして二人は永遠を手にするの

In the blue of all the unlimitedness
どこまでも広がる青い空

In the sky, no more problems
あの空で 何も心配することもなく

My love, do you believe that we love each other
愛する人 互いの愛を信じ合いましょうよ

God reunites those who love each other
愛し合う二人は神様の前で再会するの 



母が抱え続けてきたこと、
両親のお互いへの愛、
そして私への愛情、
二人が私が夢へと進んでいけるようにと
してきてくれたすべてのことにささげるため、
オリンピックが私にとって持つ意味のために、
私はこの曲で滑るべきなんだと思いました。

この歌の詞、メロディが伝える無限の情熱、優しさと喜びが、
ロマンティックなイタリアの観衆に
とってもフィットする可能性を沢山持っているように思わせました。   

(後略)

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愛の讃歌は、エディット・ピアフ自身が作詞した歌でしたが、飛行機事故で亡くした恋人のマルセル・セルダンにささげた歌だとも言われています。

ジョアニーのような人を見ていれば、どれほど彼女が両親の愛に包まれ、善き愛の元で育ったかがわかります。
私が彼女の人柄に惹かれてしまう本質なんだろうと思います。

そんなお母様の思いも胸に抱いて挑んだトリノのフリーで、ジョアニーの演技は本当にステキでした。
今でもはっきり覚えている演技です。
実況していた刈屋さんが、愛の讃歌が好きだったらしく、しばらく無言になっていたシーンがありましたっけ。

ジョアニーが一番に輝くその瞬間を、そのお母様が見ることが出来ないなんて・・・なぜ神様はそんなことをなさるのだろうと、思わずにいられない。

どうぞ深くお眠りください。
そして彼女を変わらぬ愛で包み続けてください。

ジョアニー、どうかあなたが、天に届くほどに輝けますように。