男子シングル

男子シングルの感想の前に・・・。

ジョアニーに対する選手・仲間からのコメントがいくつも上がって来てますね。
スケートカナダも仲間たちも、彼女のプライバシーを最大限に守ろうとしてくれているようです。

お父様のノーマンドさんも、ご友人と共に、公式練習に出る娘を客席から見守りつつ、涙を浮かべていたという記事がGoogleのアラートでかかってきてました。お父様とジョアニーの気持ちを思うたび、ただただ胸が痛んでいます。

さて、男子シングル、ようやくまとめます。

金メダルに輝いたエヴァン・ライサチェック。

凄みはショートのほうがあったのですが、フリーのシェヘラザードは一つ一つのエレメンツが本当に確実で正確に見えました。私のようなただの1ファンがいうことに、真実性はないけれど笑。
彼は輝くような派手な個性の持ち主ではなく、かといって職人筋のような朴訥とした雰囲気でもない。
でも一つ一つの基礎に裏打ちされた自信が見えるのですね。
彼を表現するのはいつも難しいのだけど、非常にいいスケーターということは、誰もが認めるところですよね。

これだけのメンバーの中でクワドなしで行くのは決断に勇気が要ったでしょうね。
彼も決して今の体はベストではないと思います。
だけど気持ちに筋の通ったところで、いつも100パーセントに近いことをやれるんです。

もちろんもっと迫力があれば、エンターテイメント的要素は高まったんだろうけれど、後半にジャンプを沢山持ってきていましたし、要素の一つ一つをきっちりやらなければ、全力を尽くしたことにならないと思ったことでしょう。どこにもないオリンピックのメダルを目指すというのは、そういう緊張に満ちることなんだと改めて思いました。

このメンバーにおいて、決定的なジャンプを入れないでおいて勝てるというのは、誰にでも出来る話ではないでしょう。彼がそうなるほどに、スケートに自分を費やしたのだろうと感じました。
驚異的な内容をやった彼のスケートを讃えたいと思います。

さてプルシェンコさん。

もしも彼が今シーズンでなく先シーズンに復帰していたら、どうだったかな?とも思いました。

彼の復帰で、非常に緊張が高まった男子シングル。
でもそれに影響されないトップ選手もわりといたように思います。

しかし復帰直後から、やはり彼のピークよりも体力や正確性が落ちてしまったことが気になっていましたが、最後までそれを払拭されるほどに戻らなかった。それは彼の体が受けてきたダメージや年齢を思えば、ある意味仕方のないこと。
ただなにか、その経た年月を、何か違う形で見せてほしかったという思いがあります。
また、この競技が過酷なのは、緻密な内容をしながらも音楽を表現するという点だと思うのですが、その過酷な内容で盛り上げて来たトップ選手たちが多数いる中で、すこし時代にマッチしない匂いがしてしまっていたと思います。

それにしても過去のプルシェンコを置いておくならば、やはり驚異的な能力の人だと思います。
そして手術など経て、もう一度復帰するのは簡単ではないことだということを考えれば、本当にタフな心の持ち主です。
私はそんなことを考えながら、この銀はいいメダルだよ、と思っていたのだけど、彼はそうではなかったらしい笑。
それを含めて彼らしいねえ。

そして高橋大輔君。

2007ワールドの銀メダルは、02,03の本田武史君の銅からようやくの一段でした。そして五輪でのメダルの遠かった1段を上がったのも高橋君でした。
幸せといえない気持ちになる時期もあったでしょうし、肉体にダメージがあるときは、人は本当に不安定になりやすいもの。自信を取り戻していく作業は、想像よりずっとずっと大変なことだったでしょう。

モロゾフのPGのころは、私あまりピンと来るものがなかったけれど、FSのラ・ストラーダは記憶に残る名プログラムになるんじゃないかとしら。ジェフのラ・ストラーダのイメージが強くて最初は戸惑ったというような話を聞いたことがあるけど、まったく違う個性のPGだったし、世界的には彼のPGのほうが印象に残るでしょうね。

プログラムはとても気持ちがこもっていいムードでした。
ただ、冒頭のクワドの転倒以降もジャンプやスピンに不安定なところもあったし、後半ちょっと疲れて見える感じもあったりで、点数はどうなっちゃうかな・・・と心配でもありました。
結果ギリギリだったわけで、神様が努力へのご褒美と喝をくれているような銅メダルでした。

靴をあげたタケシ君、こっそり切れ掛かった紐を変えた長光コーチ。そういうあったかい思いの中で、今後体に気をつけて、自分の納得のいくところまで行って欲しいと思います。

そう、解説してたタケシ君も、高橋君のときだけはやっぱり上ずっちゃってたよね!
日本中のファンがその心情に共感していたはず!

ステファン・ランビエル・・・。

彼には本当にいろんな思いが湧いてきます。だからこそもう、何もいえません。
今日のFDだったか、会場で見ているところを射抜かれていたかな。
GALAまで、まだ日がありますから、オリンピックを楽しんで欲しいと思います。
そして元気に滑る姿を見せてください。
あなたのスケートを見たい人が、沢山待っているから。

パトリック・チャンは、改めて興味深く見ました。
彼のスケートはずば抜けすぎていて、普通に見たら簡単なことばかりやって見えるのではないかしら。末恐ろしい人です。
今シーズンになって、首や背中、肩といった場所も表現に使えるようになってきて、より大きい演技に見えました。
そうはいってもあの緊張仕切った中での演技だけに、まだ今シーズンの到達点は見えていません。
期待するとしたら今度のワールドでしょうか。
さてこれで彼が本気の本気になったなら、いったいどこまでいけるのかな、とゾクゾクする自分がいます。
好みのスケーターというわけではないけど、新しい時代の開くときに立ち会っているような気分です。


ひとまずここまで。