ファイエラ&スカリCD/OD/FD

NHK杯は個人的に「マッシモ・スカリまつり」「鈴木明子まつり」「本田武史音楽祭」な大会でした。

マッシモ・スカリさんは風貌が毎年違いますけれど、今年は過去最高によろしい感じですね。さっぱりしたヘアスタイルでクリーンにいい男でした。・・・が。

一日目はCD・ペアSP・男子SP・女子SP・ODのハードスケジュール。
でも席はうれしいジャッジサイドです。選手出入口の上にあるエリアでした。アイスダンスはやっぱりジャッジサイドで見たい!と思っていましたから、本当にありがたいことです。

さて、コンパルソリーの課題はパソドブレ。第二グループの6分練習で出入り口に現れた選手たち。マタドールあるいはエスパーニャよろしき男性陣の中に、明らかに違う衣装の男性一人。「なんだか一人、えらく胸を出した男がいる・・・」と思ったのですが、それこそマッシモ・スカリ選手なのでありました。そのお衣装がコチラ

伊達男だねえ・・・誰もが着れる衣装じゃないなあとやや気圧されたのでございます。でも、とにかく今年私はダンスのダにも触れない状態でN杯に至ったわけで、この後ことごとくファイエラ/スカリの衣装にあっと言うことになるとは思いませんでしたが。

肝心の競技のほうはと申しますと、コンパルソリーではファイスカが頭一つ出ていました。万年初心者でもわかるほどに。ムードの作り方もかっこいい。動き出すとあの衣装は線が綺麗に見えていいですね。それに女性のほうが華やかに見えるのでそれもいいなと思いました。腰をこう、くっとさせたり、手先の力強さとか脚の出し方とか背中の線も・・・ホレボレ。そうそう、スカリさんて「俺を見ろ!」ではなく、必ず「俺たちを見ろ!」なんですよね。だからあの伊達男衣装でもイヤミなく許されちゃうのね。

さてペア・男子・女子と競技が進み、もはやどろどろに疲れてややモーローとしながらODに入っていったわけですが、またしても6分練習のとき、「水兵さんが2人いる・・・」と気になるカップル2組。一組はいかにもアメリカらしい金髪+赤毛サミュエルソン/ベイツ→これね。
こっちはフツーに似合ってる。女性がクラブ歌手?かなにか、設定があるのだろうなーと想像しました。
で、もう一組は誰・・・?と思ったら、またしてもファイエラ/スカリ。これです。
さっきあんなにダテオトコだったのに・・・「かもめの水兵さん」のBGMで踊りだしそうな姿がちょっと可愛すぎました。でもファイエラさんのボトムは体操着のようでちょっとイマイチ・・・ミニスカートのほうがかわいくていいんじゃないかな?
でもプログラムは素敵でした。この時間になるとさすがにODの「20's・30's・40'sのリズムとダンス」というのにお腹一杯だったのと疲れとがあいまって、私はおそらく表層的にはのっぺらぼうのように無表情になっていたんじゃないかと思うのですが、パンパパーンとマーチ風に始まって、アニメーションのような軍人動きをしながら踊りだすと、テンション上がりました。それからタップのメロディに入ると動く動く・・・もちろんタップのように足をならしてはスケートにならないわけで、難しいと思うのですが、ステップのムードをよく出して滑っていたと思います。上半身も生き生き動かせるから華やか。いいなー・・と見ほれていたところにファイエラさんが転倒して残念でしたが、そのあともナントカ気持を盛り返して頑張ってましたね。文句なく可愛かった〜。この二人は今回出場選手のODで一番テーマ付けがよかったんじゃないでしょうか。

そして翌日のFD。この日はジャッジと反対の北側2階席だったので、双眼鏡も持参しての観戦。
またしても「ものすごい格好の人がいる・・・」とグラスを除いてみると・・・真っ白なピエロ
目もちょっとにじんできていた頃だったので、すぐには誰だかわかりませんでしたが、そこにいる人を順々に見ていくと・・・スカリさんでしかありませんでした。髪を7:3にくっきり分けた綺麗なお顔が生真面目な表情をしております。
このとき頭に思い浮かぶとしたら、「道化師」とか「ジェルソミーナ」とか・・・あとコミカルなものだと思うんです。そしてペデャラ/ブルザがサーカスの楽しいプロを演じきって会場スタオベのときには、ファイエラ/スカリもこの流れなんじゃないかな?と隣のHさんと会話して、コミカルなプログラムをイメージして演技を待ちました。
が、入場した二人はなにか固めの表情・・・。頬には涙が描かれ・・・。スクリーンの曲目紹介を見ると「Moonlight Sonata」・・・ですか?
そしてあの美しいピアノの調べが奏でられ・・・いやきっとどこかで変わるに違いない・・・でも月光は流れていく、どこまでも。非常に動きは美しいのですよ。ピエロの動きも入っているし、マッシモさんがV字スピンをするところなんてうっとりしたし、動きは音に合っているし、ステップも・・・。メロディそのままにスムーズに、淡々と、静かに躍動するふたり。そして情感溢れる様子のラスト・・・拍手。
確かに、あっという間の4分でした。でも、でも。エリック杯のダンスを見てなければわからないよ〜〜!このプログラムは何なの?と悶々と疑問を抱えて帰路に着いたわけです。でも、北側はみんなそういうムードありましたよね?
生観戦をしたときは、しばらく録画したものなどは見る気が起こらないのですが、さすがに疑問で眠れそうにもなく、家に帰ってファイエラ/スカリだけ再生しました。すると・・・。
とっても素敵・・・。
ところどころに差し込まれるピエロの無機質な動きがまた物悲しくて、画面を見つつないてしまいました。二人の表情も悲しいのですよー。人形のような、人間のようなで。
でもこれは評価や好き嫌いが分かれるプログラムでしょうね。
殊に今回はペシャブルがみんなの乗りやすく楽しいプログラムを持ってきていたから、ジャッジサイドでなかった側にはちょっとインパクトの面で負けたかもしれませんが、二人の「月光」、すっかり惚れこんでしまいました。

いままでもファイエラ&スカリは嫌いではなかったのですが、生で見たのが2007年の世選で、あの時はリズミカルで元気なFDだったでしょう?悪くないけど、いかんせん私の好みが偏っているので・・・。それにトリノのミッションは綺麗だけど少しインパクト薄く感じて、これぞという決定打になるところがなかったのです。でも昨季のFD(イェントルの曲)がとっても情感こもった素敵なものだったので、ああいうのが生で見たいなーと思っていたんですよね。
しかし2日で一気にファイエラ/スカリ株急上昇です。「月光」何回リプレイしたかわからないほど見ております。