確かなものを残した

引き続き、今日は女子二人・・・ヤン・リウとシンシア・ファヌフ鈴木明子さん。



ヤン・リウ(劉 艶)

彼女の演技、TV画面を通じてみるのは本当に久しぶりでした。でも今年の夏にトロントでウー君とウィルソンさんのPGを作ったとIFSのニュースに出ていたので、ずっと演技が見たかったのです。放送で見ることができたのはフリーのWhy Are The Flowers So Red だけでしたが、とても品のいい素敵な振り付けで、彼女のもともと持っていた綺麗さをプッシュアップしてくれているなと感じました。それに少し緊張がほぐれた、伸びやかな体の動きを見せてくれて、うれしかったです。ジャンプに失敗すると自信が揺らぐ顔をして演技をすることが多かった彼女が、今回はプログラムを通して集中し落ち着いた演技を見せてくれました。最後だけちょっとスピードが落ちたかなと思いましたが、プログラム終了後はほっとしたのとみずみずしいいい演技を見せてもらったことに、じーんとうちから響く感動がありました。TV放映では冒頭の演技だっただけに、ここでとってもいいムードをもらいました。ウィルソンさんもリンク際で見守っていたのですね。引退した方丹(ファン・ダン)といい、彼女といい、なんだかつい応援しちゃうようなかわいらしさのあるスケーターですよね。

シンシア・ファヌフ

もう、一言で、「ありがとう!」でした。
NHK杯で見ていて、滑りも綺麗だしスピンもしっかりしてるし、何より体を大きく使うことが自然に身についてるのだから、ジャンプさえ決まれば問題ない、と思って、カナダ選手権では昨年逃した世界選手権出場を決めて、このままいいムードで行って欲しい・・・という気持ちがより強くなった選手です。
トリノからの三年は、見ている私たちにしたらあっという間のようですけど、けがからの復活を目指していたこの人にはどんな時間であったのか、想像もできません。それでも自分の足で一歩一歩坂道を上って、NHK杯から比べるとトータルスコアで30点も上回ったのですよ。緊張はSP/FS通して感じましたし、けしてのびのびとした演技ではなかった。それでも瞬間瞬間大事にして、降りたトリプルはくせなく綺麗に高く、後半は表情も豊かに曲のダイナミックさそのものに染まっていたと思います。世界選手権は当然五輪のことを考えるだろうし、それが自分の翌シーズンに大きく関わってくることを意識しないわけにはいかないかもしれないけれど、氷の上に立ったその瞬間、自分が今そこにある喜びをより大きく感じて、楽しんで欲しいと思います。

鈴木明子

NHK杯でも、全日本でも、泪無く見られなかったこの人の演技を、私はいったん気持ちの奥底に沈めて、できる限り垢のない気持ちで見なくては、と、大会前に思いました。
2007年の全日本、最終グループ、すこし残念な顔で演技を終えた彼女は印象的でした。でもきっと、この舞台だってそのときと同じように、ちょっと高台の場所なんだと、全日本の高揚が解けた後に考えたからです。同時に、世界選手権に行けなかったことが少し惜しかった気持ちも、今彼女に必要な舞台が四大陸選手権だったんじゃないか、と思えたものでした。彼女にとって五輪の会場にも足を運ぶかもしれない人々がそこに見守り、その場所へ戻りたいという気持ちを持たせるような、そんな大会になればいいと願いながらSPもFSも見ておりました。
スコアと点数を最初に見たとき、残念な思いもあったし、観客達にあのタンゴを見せたかったなあという惜しむ気持ちが立ったのは確かなんですが、彼女の演技を見るともう一度、この「ちょっと高台の場所」に戻ってきた選手だと思い出しました。
でも観客達にはちゃんと彼女の思いやスケートの魅力が伝わっていたみたいですね。
今しっかりとこう思います。もう一度あそこへ戻ってください、と。伸びやかに、世界で一番幸せな顔をして、観客とともに喜びの演技をする姿をしばらくの間、頭に浮かべておきます。そしてまた、新しいシーズンの前にはそれを忘れ、一歩一歩進む姿を見つめて行きたいと思っています。