2008全日本選手権

全日本選手権、いろいろあったのですが、二人の鈴木さんと村主さん、それから美姫ちゃんに絞って触れたいと思います。

先ずは鈴木真梨ちゃん。
2006年のCOI仙台公演の際だったと思いますが、荒川さんやステファン、サーシャ、アニシナさんが地元の少年少女にスケートレッスンをする機会があり、NHK仙台局のニュース内で取り上げてくれましたが、そのとき中心となって描かれた少女のことがずっと記憶に残っていました。ステファンが「もっと情熱的に!」と日本語で声をかけて手本の滑りを見せると花開くような憧れの表情で見つめていたあの子が、全日本Jr.の放送時に素晴らしい演技を見せ、感激の余り泣いたものでした。それも本当に素敵な演技をするスケーターとなって。
今回はその時見ることの出来なかったSP白鳥の湖もしっかり放映され、とても嬉しかったです。
FSくるみ割り人形は、出来でいうとジュニアの大会時のほうが良かったかもしれませんが、それでもシニア対応で入れたスパイラルでしっかり魅せてくれましたし、スピードもタップリありました。若々しいなかにもとっても上品で大きな演技を見せてくれました。
全日本ジュニアでも感じたのですが、巧みなスケーターというのでもないし、天才的な才を持っているという風でもありませんが、緊張しながらもしっかり練習したことを見せようという気持ちが溢れていましたね。あのときのステファンの「情熱的」という言葉が彼女に宿ったのかもしれない、そんな風に思える、音の美しさを表現していました。手の先までよく気持ちが込められていました。

ここで貴重な経験をしたことが、オストラヴァのジュニアワールドにも生かされ、氷上の舞台を心から愉しめますように。

それから鈴木明子さん。
SPのラ・カンパネッラが硬い演技となってしまいましたが、NHK杯のことも思い出して、きっとフリーでは力一杯演じてくれると信じておりましたし・・・それ以上の熱い演技となりました。aちゃんが「会場に来なかったことを後悔する」といっていましたが、本当、画面上でこれほど躍動したのなら、実際の彼女はどれほど大きなムードで観客を魅了したのだろうか・・・と、目眩のような興奮を覚えました。伸びやかさではNHK杯の時のほうがあったようにおもいますが、何しろかの機会は生で見た後、映像では確認していませんので、ハッキリ比較できません。しかし今回は思いの強さで前回を上回っていたように感じました。冒頭の3連続は最初のジャンプが高くてお見事でした。次の2A−3Tは降りたときにちょっと回転足りないかな・・・と思いましたが、正直、その後のエレメンツは彼女の演技に見入っていたのであんまり記憶してません。途中で不意にぱらっと自分の目から涙が落ちて驚いたと同時に血が駆けめぐり出す様な感覚に包まれてしまった。明子さん観客と一緒になって踊っていましたね・・・終わったと同時にわあっと会場中が立ち上がって・・・。何という言葉で表したらいいか分かりませんが、あの演技を自分の血脈にしっかり記憶させた感じがします。
点数は、思ったよりちょこっと少なかったのですが、2−3以外にも回転不足取られてたんですね。でも観客の出した点数はずっとずっと大きかったと思います。
来年彼女は4CC出場が決まり、バンクーバー五輪の会場に立って演技をする・・・それが今からとても楽しみ。
そして同時にポイントも加算されていくことを考えれば・・・来年のさらなる飛躍を、今からタップリお祈りいたします。

村主章枝さん。
正直明子さんの興奮から冷められないまま演技が始まってしまったので、冒頭はほとんど覚えていません。でもじき冷静になって、久々に見る勢いのある村主さんを頼もしく思いました。実のところ結果は先に聞いていたのですが、それをおいても見終わった後に何とも心地よい疲労感を覚える緊張と爽快感溢れる演技でした。
神懸かりのようではあったけどそう言ったら本当に村主さんに失礼・・・だって間違いなく努力や思いの強さで乗り越えていった演技だったのだもの。そして村主さんは、こういうふうにスピードがあって、基礎をしっかり練習したところが垣間見えるような・・・そういう、愛すべきスケーターだということを心の隅々まで実感することが出来ました。
トリノから魔法にかけられてしまったという彼女のスケート競技人生が、どんなカタチでゴールに至るのか、これからの1年2ヶ月をしっかり見守っていこうと改めて思いました。

あたらしいフリーの衣装、良かったですね。やっぱり彼女は彼女らしい衣装を着るほうがずっと似合うんですね。

ところで前日のSP演技、地上デジタル放送で放送の録画予約をしたところ、どういうわけか彼女の演技のほとんど終わりから始まっていました。プレ番組と思っていた部分から本放送が始まっていたとは露知らずで、本当に残念。おかげでフリーの日は無事どちらも予約出来ましたが。

安藤美姫選手。
SPは良く体も動いていました。キスクラではファンの方が投げたものなのか、愛情タップリの花束を抱えていて微笑ましかったです。
フリーは直前のウォームアップで村主さんと衝突して、膝から落ちたようにも見えぎょっとしました・・・。お互い避けようとしたけど間に合わず・・・といったような感じでした。そのあと表情が曇っていたので、かなり心配になりました。彼女は体に絶対の自信をもてない状況がここずいぶん続いていますが、もうこれ以上怪我は勘弁してあげたいと本当に・・・。
FSでは足の心配もあったようですし、実際痛めてしまってMOIではジャンプ無しで演技をするという状況になったわけですが、それでもかなり集中して演技していたと思います。だいぶPGもカタチになってきました。残念ながらスローで見なくても分かる回転不足があったり、後半は疲れが浮かんでいましたが、それでも必死に世界選手権をたぐり寄せようという思いは伝わりました。
本当は、MOIも休んで良かったと思うのですが・・・それでも彼女はそこから去れない。村主さん同様に彼女もトリノでかけられた魔法の中に居るんじゃないかと思えます。だからやっぱり、見つめていくしかないんだなあとつくづく感じます。

おまけで・・・浅田舞ちゃん。
6月にタケシ君につくまで、半年一人きりでやっていたということも、ジャンプが飛べなくなっていたということも、本当に私はショックだったのですが、それでも今回の演技を見てかなりほっとしました。前を考えれば難度はかなり下がりましたし、ちょっとづつではありますけど、ジャンプがしっかりしてきたし、スピンも良くなってきているし(回転足りな〜い!というところはありましたけど;)、なによりこんな明るくてすっきりした顔の舞ちゃん久々だったので、本当にうれしかった。タケシ君がコール直後に「楽しんで」といったあとにヒラっと笑った顔がすごくきれいだったでしょ?心は顔に表れてくるんだなあ・・・。